big fan of 2000年代Hiphop

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DPGC"Real Soon"

 2005年末にSnoop自身のレーベル、Doggy Style Recordsからリリースされた「Welcome To Tha Chuuch-Da Album」の先行シングルとして発表された本曲は、クリップスの創設メンバーの一人であり、強盗殺人の罪で死刑が確定していたものの、自らの過ちを悔い、若者が自身と同じ道を辿らないよう、様々な形(ex絵本等)で平和運動に尽力していたStanley Tookie Williamsの死刑への反対・中止嘆願運動を自身が中心となって働きかけていたSnoop Doggが、その活動の認知・普及の推進のためと、Tookieと同様に塀の中にいる同胞に向けての応援の意味を込めて作った中身の濃い曲です。

 結果としては彼らの努力むなしく、Tookieは同年12月13日に刑が執行され、この世を去ってしまいました。彼の死はアフリカン・アメリカンコミュニティーにとって、たとえ過去に殺人を犯してしまったとはいえ、人生を立て直した偉大なロールモデルであったゆえに、その喪失による影響は非常に大きいと思います。

 以上がこの曲の持つ背景ですが、その内容もさることながら、楽曲としても原曲のHarold Melvin&The Blue Notesの「Hope That We Can Be Together Soon」の持つやさしさと暖かみとDogg Pound Gangsta Cliqueならではの「G」感も入って、甘さの中にピリッと辛味を効かせた、21世紀型のSoul・Funk曲です。

 原曲自体が素晴らしいテンダーSoul(テディペンだけに)で、ProのBattlecatがピックアップしてきたのか、それとも事あるごとにSoul愛を語り,鼻歌るSnoopによるチョイスなのか分かりませんが、サウンドのみならずそうしたコンセプトまで「弾きなおした」という点で天晴であります。そしてそこにドゥンドゥンと低音を効かせたHiphopのオケにして、いつもの彼らのスタイルを貫き、4人それぞれの味のあるラップ・歌がのった、良いトラック+カッコいいラップ・歌=良い曲、という至極シンプルな結果となりました。

 中でも私的に一番グッときたのはNateの歌で、特に後半のアドリブ的なパートが僕の大好きなR.Kellyに勝るとも劣らない、伸びやかで抑揚の効いた、クールなものとなっています。

 またこの曲のMusicVideoは刑務所を舞台に囚人達や面会に来る人の様子を描いたもので、そこからは彼らと彼らを待つ人々の抱える寂しさや辛さが映像(モノクロなのがまた良い効果を生んでいる)から滲み出ており、語弊のある感想かもしれませんが美しいと感じました。もちろん彼らは何らかの罪を犯したが故に収監されているわけで自業自得でとも言えますが、そうせざるを得ない環境というのがあるのかもしれません。この曲の存在はそうした事を考えるキッカケになるでしょう。

 この曲はその背景や楽曲の内容・MusicVideoの全てがリンクして、サウンドとしての「音楽」以上の「芸術作品」として後世に伝えるべきものだと思います。「The Rap Year Book」というHiphopの歴史上重要な曲を1年につき1曲のスタイルで紹介・解説した本がありますが、1曲という縛りがないのであれば絶対に入れるべきであり、Hiphop及びアメリカ社会にとって目を向ける・耳を傾けるべき作品だと思います。