big fan of 2000年代Hiphop

持っているCDと雑誌を管理するための記録ブログです。

The Notorious B.I.G "Spit your game"

静かに燃える系で、いつものSwizzよりもバウンス感は控えめながらもピコピコ・キラキラ音を隠し味に所々まぶして、よく聴くとカラフルで聴かせるトラック上でBiggie・Twista・Krayzie boneの三者によるスピット合戦が繰り広げられる本曲。主役のBiggieは勿論、それ以上にTwista・Krayzieのスピットが激しくカッコよし。この二人の凄いところはただ早いっていうんじゃなくて、緩急のつけ方、崩し方と歌心溢れる点が頭抜けているってことだと思います。尚、remixでは8ball&MJGが加わり、個性豊かな面々による濃厚極まりないマイクリレーが楽しめます。

50cent "Hustler's ambition"

 2005年公開の50cent主演の映画「Get rich or die tryin'」からインスパイアされたという形の同名のアルバム収録で映画の主題歌でもある本曲。Proは中西部はミズーリ州セントルイス出身のB-Moneyで、74年生まれの彼はすでに10年ほどセントルイスでDJとして活動経験があり、Producerになるために2000年夏にNYに移ってきたそうで、producerとしては無名なもののクリエイターとしてはベテランです。

 そんな彼が50centの半自伝映画の主題歌に大抜擢されるに至った経緯は、知人のつてを使って50centの弁護士経由で50までビートを届けることに成功し、晴れて本曲のビートが採用され50の2nd「The massacre」に収録予定でしたが、サンプルの使用許諾手続きが間に合わかったため「Get rich~」に収められることになったそうです。

主観ですが2ndに間に合わなかったことが結果的に良かったと思います。映画主題歌用に書き下ろしたと思えるトピックとサウンドでこれ以上のベストプレイス・タイミングは考えられません。

楽曲は雄弁な勇ましさではなく、静かに燃え滾る闘志をグツグツと感じさせるウワモノと声ネタに、太く粗いドラムが絡む最高にDopeなトラックですが、原曲はMazeの"I need you"で、この曲自体が大変素晴らしく、必聴です。尚、ドラムはTritonのプリセット音源だそうで、これを知って個人的にはドラムはプリセット音源で十分だと感じました。むしろ私が2000年代のメインストリームHiphopR&Bが他の時期に比べて特別好きな要因の一つは、この時期活躍していたPro達がおおよそ共通の機材(Triton・Motif・Fantom・TR-808のような音の素材を備えたもの)によって、ことドラムに関してはノーサンプリングが主流であったから、と自分の中では理解しています。

ラップは50centのぶっきらぼうながら人懐っこいフロウと、50自身による愁いを帯びたhookが仄暗いトラックにマッチしており、50cent.G-unitによる哀愁路線の毎度のハイクオリティーぶりには脱帽です。

本曲を収録したアルバムはかなりの粒ぞろいで、映画は未見ですが今でもシーンにおいて最大勢力であった「あの頃」のG-unitを味わうためによく聴いています。

 

Fabolous "Return of the hustle"

2007年作アルバム「From nothin' tosomethin'」収録の本曲、Proは00年代東海岸を代表するJust blazeでFabolousはもちろん、途中でアトランタに移り住むものの自宅からBlock Partyが眺められる環境で育ち、Boogie down productionに夢中だったSwizz beatzと、さらに音像的には大元であるMandrill曲の方が近いものの、明らかにモチーフはEPMDの"Rampage"であることから,これもまた一つのN.Y shitと言えるでしょう。 

 さらにフックを担うSwizzはWu-tangの"C.R.E.A.M"を高らかに唱え、もうどこを切ってもN.Yのエッセンスか溢れ出てきます。私的にはSwizzのパーティーロッカー、ハイプマンとしての働きは常々評価しており、Fatman scoopやODB並みのキャラ立ち君であり、自身作はもちろんゲスト参加でも毎回しっかり爪痕を残していて,その性格、考え方も含めて単なるProに留まらない、真のタレントだと思います。

 トラックに目を向けると、大迫力の壮大なストリングスを用いた豪勢なサウンドで、PVも含めてとても景気の良くイケイケ感たっぷりです。今現在は見当たりませんが、かつて2007年春頃には本曲のbehind sceneがYoutubeにあり、そこではっきりは覚えていませんが、Just blaze指揮のもとオーケストラが演奏する場面があり、そのスケールの大きさに驚きました。

ラップについてはFabolousはどんなタイプの曲でもそつなくこなし、ルックスやアティチュード・癖のないラップという要素全てひっくるめて「クール」な存在感が生まれていて、Hiphop界において汗を感じさせない「Smooth operater」といった印象を受けます。"(I'm a king of) Girls"なんて曲をやってケチがつかないラッパーもそうそういないと思います。

 本曲はそんな「イケてるやつは何をやってもイケてる」を体現するFabolousによるイケイケクラブアンセムです。