big fan of 2000年代Hiphop

持っているCDと雑誌を管理するための記録ブログです。

The Game"Hate It Or Love It"

 2005年リリースのThe Gameのデビューアルバム「The Documentary」収録の本曲。Proは当時50CentとBeef関係にあったJa Ruleの前年のヒット「N.Y」を手がけたフロリダはマイアミ出身の2人組Cool&DreでTrampsの75年作"Rubberband"を用いたアルバム中随一のソウルフルソングです。

 原曲に疾走感のあるドラムと太い低音を加えたことでボトムのしっかりしたHiphopビーツに仕立て、そこに自信たっぷりのGameのラップとフックを50と二人で分け合う構成がハマって、良曲がひしめくアルバムにおいてシングルになったのも納得の出来です。またこのトラックがどれほど優れているかをあらわすものとして、Mary J Bligeが参加したものや、Maryが自身のアルバムに入れたヴァースもフック全て歌った"MJB Da MVP"やG-Unitメンバー総出のG-Unit Remixの存在が挙げられます。

 特にG-Unit Remixは各々のMCが順番にフックも担当するもので、Ja Ruleの"N.Y"に作りが似ています。もしかすると同じPro・構成でも俺たちの方がイケてるぜ、というサブリミナルDissソングなのかもしれません。まあ「俺がラップ界のMVP」なんて宣言してる曲ですから基本的には不特定多数の全方位に向けたボースティングもの、つまりオーセンティックなHiphopですね。

 サウンド以外に目を向けると「How We Do」のPVでは不気味で恐ろしい印象しかなかったGameが本曲のPVではとてもピースフルな立ち振る舞いもあって、50Cent同様中々愛嬌があります。PV全体としても陽光の射すフッドを舞台にGameのクルーや遊ぶ子供たちの様子も映し出され、曲調と相まってとてもあったかくぬくもりを感じるPVです。またこの陽光が大フィーチャーされた作りはおそらくGameの所属するオレンジ色ギャングをアピールするためでもあると思います。

 

 

T.I.「Trap Muzik」

今回取り上げるのはT.I.の2003年リリースのアルバム「Trap Muzik」です。このアルバムは2005年、僕が高校2年の夏休みに今は亡きタワーレコード横浜モアーズ店でMobb Deepの「The Infamous」と共に購入した思い出の一枚です。この時すでにT.I.については"Bring Em Out"のヒットで好きなラッパーだったのですが、なぜその曲の入ったアルバム「Urban Legend」ではなく、何の前情報も持ってなかった本作を購入したのかというと、僕の天邪鬼な気質がそうさせたのです(笑)

 が、しかしこの選択は大正解でした。まあのちに「Urban Legend」も買うことにはなるのですが、両者を比較すると「Trap Muzik」の方が好きなんです。その大きな要因である2点について書かせていただきます。

 まず1点目はCharles Pettaway等のミュージシャンを多用し、生ギター・ベースをふんだんに取り入れた、変化に富んだ楽曲が多いことです。

 特に最多の6曲に起用されたCharles Pettawayは調べてみたところ、Curtis MayfieldTeena MarieといったSoul・Funk勢からUGK、Big Tymers、Lil Wayne作品と幅広く活躍するミュージシャンだそうで、それを知って上述したアーティストが好きな僕は好きな音楽の「出汁」が分かった気がして1人で興奮してしまいました。

 そして2点目はKanye Westによる創造性豊かなサンプリングワークです。ここに収録された2曲は彼のベストワークと言っても過言でないくらい冴えています。

 ”Doin My Job”は原曲も十分素晴らしいのですが、早回しによってより一層心に訴えかける非常にエモーショナルなトラックになり、そこにT.I.のアフリカン・アメリカンとしての厳しい境遇と思いを吐露したラップが原曲とT.I.との間で時空を超えて共鳴した美しい曲です。

 "Let Me Tell You Something"は「Roger Troutmanの"I want be your man"をサンプリングした。」なんて風に簡単に言わないでほしいくらいクリエイティブな使い方をしています。基本的に素直なサンプリングするKanyeですが、この曲ではフレーズを切り貼りしてさらにBoskoによるトークボックスも実にうまく絡めて原曲以上に甘酸っぱさとハピネスを生み出しており、彼の創造力には脱帽です。

 以上の点から購入してから16年たった今でも末永くこのアルバムを愛でています。

50Cent "Outta Control(Remix)"

 50Centの2005年リリースの2ndアルバム「The Massacre」収録の"Outta Control"のRemixである本曲。2005年は50Cent及びG-Unitにとって大きな動きがあった年で、The Gameが去るものの、新たにM.O.P、Mobb Deep、Maseが加わり、それ以前に加わっていたDeath row出身のSpider Locと、初の女性シンガー、Oliviaも含めて当時のシーンにおいてNo.1クルーを築きつつあり、その雄姿は米XXL誌の1,2月合併号で拝むことができます。特に2005年早々に大ヒットした50Centの”Candy Shop”によって,G-unitのファーストレディーとしてOliviaの存在は広く公に認知されるようになりました。

 そうした活発な動きを見せる中、新たに投下された特大ボムがDr DreプロデュースによるMobb Deepと50による本曲で、ハードコアが売りのMobbと重厚なDreサウンドが合わさった新たなG-Unitクラシックの誕生となりました。

 サウンドは高音すぎて捻じれたようなヒリヒリしたメインループと,そこに呼応するようにダークで重いオルガン?フレーズが入ってくるウワモノだけでもゾクゾクしますが、なんといってもキモはズッシリと重く、砕け散りっぷりの見事なドラムで、この頃のDreのドラムはこうした「ズシャッ」としたヘビーな質感がカッコよく、2006年のBusta、Jay-Z、Snoopのアルバムでも同様のドラムが採用されています。個人的にはこの頃のドラムとMark Batsonによる鍵盤の組み合わせがDreのキャリア中一番好きな作風です。

 ラップは50によるフックがキャッチ―で、PVでもOliviaがメロディに合わせて口ずさむシーンが象徴するように、曲調はダークで重たいのですが、テンポが緩いため、リラックスしたパーティー感もあります。余談ですがPVでのOlivia嬢は他のどのモデルさんよりも可愛くみえます。

僕は英語が苦手なため、ラップはフロウのフィーリングを楽しむタイプですが、そんな僕でも分かる&グッときたのがProdigyによるザ・ヒップホップな"I'm young,I'm black, I'm rich and yes!"というラインで、ここだけ一緒に口ずさんでしまいます(笑)。

 個人的にはMobb Deepは小柄な体躯に反した(?)過剰にマーダー感をアピールするスタイルがちょっと無理した背伸び感を感じ、往年のファンには怒られそうですが、カワイイ印象をもってます。

 結局新たに加わったメンツでG-Unitとしてアルバムを出せたのはMobb Deepだけで、彼ら以外はアルバムリリースに至りませんでしたが、特にOliviaは"Best Friends(Remix)"と"So Sexy"の出来が良かっただけに残念でした。