big fan of 2000年代Hiphop

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Trae "Swang"

 TraeのことはZ-ROの2005年のアルバム「Let The Truth Be Told」収録の"1 Night"にて初めて知りました。その曲で聴かせる歌とラップがドープだったので調べて出会ったのが今回紹介する"Swang"です。

 記憶が確かなら本曲をYoutubeにて発見したのは2006年5月頃で、当時の彼はメジャーデビュー直前で、本曲はアルバムからの1stシングルとしてすでにPVもあり、またそのPVが夜の町をTraeたちがH-TownのPVではおなじみの車の蛇行運転で流していく様をカッコよく捉えたナイスな仕上がりで音楽と映像のダブルで気に入りました。

 曲はマイケル・ジャクソンの"The Lady In My Life"という優しくおだやかな良曲においてひらひらひら~と奏でられる一番美味しいメロディを使っていて、その時点で勝ったようなものですが、そこにH-Townの先輩であり98年に亡くなってしまったFat Patのスクリュー化した声ネタをサビに用い、加えてFat Patの兄弟であるHAWKをフィーチャーしてきちんとオリジナルな曲に仕上がっています。尚、H-Townのシグニチャサウンドであるスクリューですが、発明者であるDJ Screwと、そのもとに集ったFat PatやHAWKがオリジナルメンバーであった「Screwed Up Click」という集まりがH-TownのシーンをRap A Lotと並んで発展させた超重要な軍団でして、当時(2004~2005)のBmr誌ではとても詳しくそれらの歴史や概要を特集してくださっており、自分はそうした記事に大変お世話になりました。ちなみにTraeやその従兄弟であるZ-ROもScrewed Up Clickのメンバーです。

 僕はオリジナルメンバー期のS.U.C作品や上の世代のH-Townラッパーの作品は持っていないので言えることはないのですが、TraeやMike Jones、Lil Flip等の作品にはBig Moe、Big Pokey、Lil Kekeなど上の世代がたびたび参加しており、そこからは先人に対する大きなリスペクトを感じます。

 "Swang"が気に入った僕はこの1曲のためにアルバムが出たら買おうと決心し、そこから少し延期があったのち、7月の末に待望のアルバムは発売されました。夏休みに入った僕は、当時の新譜CDは決まって横浜モアーズ内にあった大きなタワーレコードで買っていたため、この時ももちろんそのタワレコへ夏休みに入った嬉しさも相まっていつもより上機嫌で向かいました。そのタワレコは当時かなり広いスペースで洋Hiphop・R&Bコーナーがあり、ニューリリースのメジャーアルバムはほとんど視聴できる環境でした。

 朝から買う気満々でしたが、家に帰るまで待てそうもないので視聴してみることにしました。するとびっくりすることが起きていました。お目当ての"Swang"のトラックが違うものになっていたのです。 

 大幅な曲調の変化ではないものの、「あのビート」を期待していた僕はショックを受け、何回も繰り返し聴いた末、どうしても納得できず買いませんでした。変わったバージョンは、哀感がさらにUPしていて、なおかつハイファイなキラキラした音像の好きなタイプでしたが、最初に出会ったオリジナルの方がやっぱり好きだったのでションボリして帰りました。

 最終的には数か月後に同じアルバムに収められた"Real Talk"目当てで買ったのですが、そんな経緯もあって"Swang"およびアルバム「Restless」はとても印象深い作品です。ちなみに本曲にはさらに異なるバージョンがあり、そちらは黄昏感のあるギターが加わって、思わず遠い目をしたくなる出来で、今考えると3つの味を楽しめてラッキー!という感じですが、当時はそうは思えませんでした。

 そんな"Swang"ですが、とても好きなのでレコードプレイヤーを持っていないのに12インチシングルも買っちゃいました。これで聴こうと思えば(レコードプレイヤーさえ用意できれば)オリジナルを聴ける、となったところで満足して僕の"Swang騒ぎ"は終わりを迎えました。まあ結局いつも聴くのは簡単だからYoutube上なんですけど…。


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 こちらがオリジナルです。PVもカッコよくてお気に入り。


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 "Swang"にグッと来た最大のポイントはこのマイケル曲のメロディーだったので、他のバージョンもカッコイイですがやはりオリジナルが断然好きです。またこの元曲も僕の好きな、「ゆっくりしたカッコよさ」を感じさせます。僕は音楽において「速いカッコよさ」よりも「ゆっくりのカッコよさ」が好きなのでいい曲を教えてもらいました。


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 この曲を聴くと何となく「思えば遠くへ来たもんだ…」という謎の感傷に浸ってしまいます。アイズリーはまだアルバムは3枚しか持っていないのですが、パワフルなのから甘いの、せつないのとあらゆるタイプの素晴らしい曲が盛りだくさんなので、ちょびちょびアルバムを集めるのを楽しんでいます。しかし自分のペースだと果たして死ぬまでにコンプリート出来るのか微妙ですが、アイズリーを聴くためにも長生きしたいので健康に気を付けます。


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 プリンスに関係のあるグループとよく勘違いされるという彼らですが、僕は本家(?)プリンスよりも彼らや、本当にプリンスと関係のあるThe Timeの方が好みです。この曲の私的ハイライトは終盤、6分3秒から絞り出すように歌われれる「レッェェミノオオユダアアア~ン」のフレーズで、いつ聴いてもバタンキューです。


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 プリンスはロッキッシュな曲はあまりピンと来ないのですが、彼のスロウやディスコ系と歌(特にファルセット)は好きです。この曲は壮絶な歌唱と神々しさを感じるサウンドに飛ばされます。


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 Zapp&Rogerの曲で狂おしい歌声を聴かせる彼女のソロアルバムは胸の熱くなる好曲が目白押しなのですが、中でもこの曲は2000年代好きとしてはカニエがプロデュースしたDo Or Dieの"Paid The Price"の元ネタというキッカケで出合ったのですが、あまりのソウルフルさに一発KOされました。

 僕はこうしたゆっくりとした曲に特にゾクゾクっときます。一つ一つ確かめながら歩を進めていくような曲調に心を揺さぶられます。


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 本曲は2005年屈指のドリーミィーソングであり、曲の出来もさることながらこのPVがたいへん美しいものでありまして、上記の映像は2005年という時代のフレイバーとアフリカンアメリカンの人々の文化や暮らしの一端を垣間見ることができる、貴重なものです。集合住宅やその入口付近でたむろする人々の様子と、彼ら彼女らの服装を捉えた本PVは、遠い異国の、彼らの創る音楽に魅了された少年(私のことです)にとっては大変興味深いものであり、このPVによって自分の好きな音楽の育まれた環境を多少なりとも知ることができました。ラッパーが頻繁に口にする「ストリートからのリスペクト」というものが、いまいち僕は分からなかったのですが、こうした近いところの人々からの評価と敬意のことなのだな、とこのPVでイメージをつかむことができました。

 上で述べた全体的な感想に加えて細かい感想を述べていくと、まずは主役であるTrey Songzの色気の半端なさが一番印象的です。白タンク、コーンロウ、筋肉、そして彼の立ち振る舞いにノックアウトされます。彼のこうした色気はおそらく彼がインタビューで述べていた、「俺はR&B歌っているけど、聴いてきたのはヒップホップ(のほうが多い)」という点にある気がしまして、つまり、他のシンガーに比べてヤンチャでエネルギッシュなパーソナリティーの持ち主ゆえに、挙動のあちこちにチャーミングさやワルセクシー感が出るのだと思います。最後に見せるウインク&スマイルはヤバいです。

 ちなみPVにはクリス・ブラウンがちょこっと登場するのですが、ただただ可愛いスマイルを見せてくれます。ゲスト出演で気楽だからかノリノリで楽しそうです(笑)

 


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 この曲・このパフォーマンスが僕にとっての究極かもしれません。鳴らされる音の全てに心を揺さぶられます。この曲を収めた2006年の彼のアルバム「Futuresex/Lovesounds」は僕の2006年の歌ものベスト1位です。このアルバムで彼はFunk、ダンス、ラテン、スロウと様々なタイプの曲をやっていますが(加えてそれぞれの要素が独立しているわけではなく、混ざり合っている)、スキップする気が全く起こらない、一大エンタテインメントに仕上がっており、僕はこのアルバムを聴くたびに2000円程のお金でこんなに素晴らしいアートを何度でも好きなだけ味わえるということに驚きを隠せません。このアルバムのような素晴らしい作品がどれだけ自分を癒し、楽しませてくれるのかを思うと、僕が人生において唯一、借り物の意見や情報に依らずに言えることは「好きな音楽があると人生が豊かになる。」というもので、そんな大げさなことを書きたくなるパワーがこの曲及び前述のアルバムにはあります。

 付け加えると上記のパフォーマンスはアルバム版をはるかに凌ぐ熱情を伴ったもので、この曲はライブでこそ本当の真価を発揮するのだとここで知りました。まず何はさておきここでのジャスティンはアルバムとは比べ物にならないくらい情感豊かに熱いヴォーカルを聴かせてくれます。というかアルバム版とライブ版では感情のベクトルが違う気がします。うまく説明できませんがアルバム版とライブ版をそれぞれ喜怒哀楽で分けたら異なる位置にいると思います。

 加えて本曲はアドリブを入れる想定で作られたのか、音数は少なくシンプルで余白が多く、聴衆とのコール&レスポンスパートもあり、上記のライブではその余白をピタリと過不足なく埋めた完璧なパフォーマンスとなっています。骨子のジャスティンとピアノとドラムにて進められていくストーリーに、その都度的確な楽器や歌唱が寄り添い、絶対に外せないコール&レスポンスパートもオーディエンスを巻き込んで演者・聴衆共に恍惚の空間を共有することに成功しており、この場にいた人は絶対にこの音楽体験を忘れることはないでしょう。

 また、憶測ですが、この曲のやけにしっかりしたドラムはライブにおいて観客がリズムを取りやすく、一緒に歌いやすいようにする効果を狙ったのかな、なんて思います。僕もこのライブを観ていて、ゆったりとしたリズムのデカいドラムに自然とコタツに入りつつも参戦してしまうくらいノリがつかみやすかったです。

 2000年代から選ぶとこんな感じです。2000年代以前も2000年代もまだまだこういった感じの曲で好きなものはたくさんあるので、今後色々紹介させていただきます。


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 話をTraeの"Swang"に戻します。こちらはアルバムに収められた哀感&キラキラ感UPバージョンで、タワレコで視聴してこれが流れてきたときは本当にビックリしました。


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 そしてこれが黄昏ギターが加わった、思わず遠い目をしてしまうバージョン。でも悲しみ一辺倒ではなくどことなく暖かく、ほっこりした印象を受けます。Rap A Lotの公式サイトではこのバージョンが採用されて流れていました。余談ですがRap A Lotの公式サイトってなぜか音質がすごく良くって、すごいクリスピーだったんですよね。

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 こちらが2006年7月末にリリースされたTraeのメジャーデビューアルバム「Restless」で、実際に購入したのは翌2007年の1月に、HMVオンラインにて3枚購入で割引みたいなやつを利用したのですが、その時同時に購入したのがPaul Wall「The Peoples Champ」とPimp Cの「PImpalation」というプチH-Town祭りでした。

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 僕は完璧なCD世代で、CDというメディアに対して特別愛着が深いのですが、CDの好きなところはCD自体の盤面にもデザインがあることです。クオリティの高いものも結構あって、これはお気に入りの内の1つです。ここで彼が着ているTシャツに描かれている人こそがスクリューサウンドゴッドファーザーであるDJ Screwで、彼もその一派であることと、Screwへのリスペクトをドカンと表現しています。

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 こちらは中ジャケなのですが、Traeは相当犬が好きらしく、相当昔、Youtubeで自分の飼い犬たちに「Good Boy!」や「Good Girl!」なんて声をかけて戯れるTraeの動画がありまして、犬が好きな僕はそれだけでTraeが好きになりました。

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レコードプレイヤーが無いのに買ってしまった12インチシングルですが、これのおかげで無事に成仏できたので買ってよかったです。僕にとって聴けないのにレコードを買ってしまう曲というのはマイクラシックの証であります。